ビルの屋上や工場の敷地に置かれた大きな機械を指して、「あれはチラーです」と説明されることがあります。エアコンの室外機に似ていますが、役割は少し違います。この記事では、チラーとは何をする機器なのか、どんな種類があるのか、空調設備の中でどう使われているのかを、専門用語をかみくだいて説明します。
チラーとは
チラーは、水などの液体を冷やして循環させる装置です。英語の「chill(冷やす)」が語源で、日本語では「冷却水循環装置」と呼ばれることもあります。
エアコンが空気を直接冷やすのに対し、チラーはまず水を冷やします。その冷たい水を配管で必要な場所へ送り、そこで空気や機械から熱を奪います。温まって戻ってきた水を再び冷やして送り出す、という循環を繰り返します。
建物の空調設備では、チラーは冷水をつくる「熱源機器」に当たります。つくられた冷水は、エアハンドリングユニットやファンコイルユニットに送られ、室内の空気を冷やすのに使われます。
知っておきたいポイント
1. 熱の捨て方で「空冷式」と「水冷式」に分かれる
水から奪った熱は、最終的にどこかへ捨てなければなりません。その方法で2つに分かれます。
- 空冷式:ファンで外の空気を当てて熱を捨てる。設備が単純で設置しやすい
- 水冷式:冷却水に熱を移し、冷却塔で捨てる。効率は高いが、冷却塔や配管が別に必要
空冷式は中小規模の建物、水冷式は大規模な建物で選ばれる傾向があります。設置場所や水の確保のしやすさも判断材料になります。
2. 冷やす仕組みにも種類がある
多くのチラーは、エアコンと同じく圧縮機で冷媒を循環させて冷やします。大規模な建物では、遠心式の圧縮機を使う「ターボ冷凍機」が使われることがあります。
これとは別に、ガスや蒸気などの熱を動力にして冷水をつくる「吸収式冷凍機」もあります。圧縮機を使わないため、電気の使用量を抑えられるのが特徴です。冷水と温水の両方をつくれる機種は、1台で冷房と暖房をまかなえます。
3. 空調だけでなく産業でも使われる
チラーは、工場の機械や製品を冷やす目的でも広く使われています。加工機械、医療機器、食品の製造設備などで、温度を一定に保つために欠かせない装置です。調べていて内容がかみ合わないときは、空調用と産業用のどちらの話かを確認するとよいでしょう。
4. 暖房もできる機種がある
冷媒の流れを切り替えて温水もつくれる機種は、「ヒートポンプチラー」と呼ばれます。夏は冷水、冬は温水をつくれるため、ボイラーを使わずに冷暖房できます。
注意点・よくある勘違い
チラーだけでは部屋は冷えない
チラーがつくるのは冷水までです。その冷水を運ぶポンプや配管、空気に熱を移す空調機がそろって、はじめて部屋が涼しくなります。チラーは空調システムの一部であり、単体で完結する機器ではありません。
熱を捨てる環境が性能を左右する
空冷式は、周囲の風通しが悪いと熱を捨てきれず、能力が落ちたり停止したりすることがあります。機器のまわりに物を置かない、熱交換器を汚れたままにしない、といった配慮が必要です。
水の管理を怠らない
配管の中を流れる水の質が悪いと、水あかやさびが発生し、熱の伝わりが悪くなります。水冷式で使う冷却塔は、汚れや細菌の対策も欠かせません。水質の管理と定期的な点検が、効率と寿命の両方に影響します。
冷媒を使う機種は点検の対象になる
フロン類を冷媒に使うチラーは、フロン排出抑制法による点検の対象です。管理者には、定期的な点検と記録の保存が求められます。
まとめ
- チラーは、水などを冷やして循環させる装置
- 空調設備では、冷水をつくる熱源機器として使われる
- 熱の捨て方で空冷式と水冷式に分かれる
- ガスや蒸気の熱で動く吸収式冷凍機もある
- 性能を保つには、風通しと水質の管理が大切
「空気ではなく水を冷やす機械」と覚えておくと、ビルの空調の全体像がつかみやすくなります。